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腕木式信号機の細部

腕木式信号機の塗装や装備等の細部です。主として80年頃から末期にかけての晩年における形態です。 ハシゴ形態では「各地の腕木式信号機」での分類とは別の地域分類ができます。地域別に分類できるものは旧鉄道管理局名を記しています。
戦時下の金属供出のとして1938年に「鉄屑配給統制規則」が施行され、信号機においても信号柱、ピナクル、点検台、ハシゴなどが撤去供出されました。地域によるバリエーションの多くは戦後のこれら復旧の際に生じたものと思われます。

●1条鉄索

エスケープクランク、重錘桿、重錘がベースに 取付けられでユニットになています。エスケープクランクの一端に動作棒が連結されています。鉄索がてこで引かれ重錘桿の片方が降りると重錘が上がります。 このとき動作棒は上がり、反位=進行現示となります。動作棒が降りると定位=停止(注意)現示となります。鉄索断線の際は、重錘が自重で下がり、動作棒が 降りて停止現示になります。
この例は、ユニットを2組重ねた2機仕様のものです。手前が定位、奥が反位の状態になっています。

●2条鉄索

信号柱なかほどに設置される安全装置と下部柱台に設置される簡易調節機があります。
安全装置は、安全桿(こう桿)と安全子で構成され、安全桿の向かって左端に帰り線、向かって右端に引き線が連結されます。また帰り線寄りに動作棒が連結されています。この例は定位の状態です。
引き線がてこで引かれると、向かって右端が降りて動作棒が上がり、反位=進行現示となります。引き線が引かれた状態で鉄索が断線すると鉄索の緊張が弛緩 し、安全桿の向かって右端に帰り線延長と連結された安全子のツメが外れます。このとき眼鏡の自重で動作棒が降り、安全桿左端が降りて定位に戻ります。
簡易調節機は、2条まとめて常に鉄索の緊張を保ちます。

●A形電気信号機

軸付近に設けられる駆動装置で、動作棒などの鉄索による機構はありません。また回転軸が向かって信号柱左になっているのも特徴です。この装置は、電動機、ギヤ、電磁石、クラッチなどで構成されています。
信号柱なかほどに制御継電器箱が付きます。
場内信号機添装の腕回路制御器によって電気的に現示転換されます。

■信号腕木

出発:
主信号「R」「G」の現示です。
赤の裏面は白、白の裏面は黒です。
※この腕木は、JR東日本の更新タイプで単純な平板状のものです。リブがなく、色合いも異なります。

場内:
主信号「R」「G」の現示です。
赤の裏面は白、白の裏面は黒です。
※鉄板プレス・ホーロー引きのもので、圧倒的多数を占めるものです。これが図集化される以前は、ヒノキ製でした。一部の私鉄で後年まで残っていました。

通過:
出発に従属します。「Y」「G」の現示です。
橙黄の裏面は白、黒の裏面は黒です。
※鉄板プレス・ホーロー引き

遠方:
場内に従属します。「Y」「G」の現示です。
橙黄の裏面は白、黒の裏面は黒です。
※鉄板プレス・ホーロー引き

■眼鏡

原型:
色ガラス主信号「R」・従属信号「Y」部の縁が太いタイプです。

新型:
「G」と「R」「Y」部どちらも同じ縁のタイプです。

■腕木軸承

原型:信号柱中心
腕木軸が信号柱の中心線上にあるものです。多くが後年に下記右型タイプに改造されました。旧国鉄JRでは信楽駅、伊勢奥津駅、若桜駅などの盲腸線に最後まで残っていましたが、私鉄では今でも見ることができます。

新型:右側
腕木軸が信号柱を通らないタイプです。腕木の付け外し等の作業を簡単にするための改良、信号復帰器取付け可能軸承との部品共通化、あるいは60年代の連査閉そく化の準備工事などが考えられます。晩年の大多数の信号機がこのタイプです。
例では、信号柱にかつての軸穴が残っています。
私鉄にはほとんど存在しないようです。

A形電気信号機型:左側
A形電気信号機の場合のみ、向かって左側に軸がとおります。

■重錘

重錘桿の方向:
重錘桿は基本的に線路に対して直角に設置されます。

重錘の位置:
重錘は、重錘桿上をスライドさせて、信号てこと重錘桿の間の抵抗=重さと動作棒と信号腕木までの重さとのバランスをとって位置決めします。例では内側寄り、つまり、信号てこから重錘桿までの距離が比較的近いということです。

重錘桿の方向:
出発信号機は、構内建植のため建築限界に抵触する場合が多く、線路に対して平行設置のものが多数存在します。

重錘の位置:
例では外側寄りとなっており、信号てこから重錘桿までの距離が比較的遠く、抵抗が大きいということです。

■ピナクル

長:原型
原型で最も古いものです。 このタイプは戦時の金属供出の際に多くが撤去され、後年まで残ったのはごく一部です。
雨水流入防止と装飾を兼ねた装備です。

短:一般
全国的に存在し、戦後はこのタイプが標準になったようです。同形で陶器製のものもあります。この他一時的に、単純なフタ形のものも存在しました。

北海道:(下部膨らみなし)
道内独特の形状で単純な円錐型となっています。積雪・ツララ防止対策と思われます。

■腕回路制御器(アームコンタクト)

信号腕木直下の信号柱に装備される黒色の箱型のものです。この腕回路制御器と眼鏡が動作棒で連結されています。信号腕木の転換によって腕回路制御器の構成する回路が切り替わります。
場内信号機の腕回路制御器で遠方信号機(色灯式とA形電気信号機)を制御します。また、てこ扱所の信号反応器を転換させて腕木の転換状態を確認するためにも使用されます。国鉄では主信号については全て添装したようです。

■出発合図器

腕木式信号機特有ではなく出発信号機全般に添装されます。出発信号機の信号柱なかほどに設置されるほか、独立柱によるものもあります。
貨物や長大編成の設定されている線区で停車列車先頭がホームから外れ、駅長の出発合図を視認できない場合に使用されます。点灯とブザーによって出発合図を知らせます。
閑散線区ではほとんど見られません。

■信号復帰器

腕木式信号機は、近年まで連査閉塞区間にも使 用されていました。連査閉塞区間では、出発信号機およびそれに従属する通過信号機を保留現示(進行現示し、列車が出発あるいは通過し、その出発信号機の内 方にある軌道回路を踏むことによって出発信号機は停止現示に通過信号機は注意現示となる。また、いったん信号てこを定位にもどし、閉塞取扱いを行った後で ないと反位にできない)機能が必要となります。裏眼鏡付近の腕木回転軸に信号復帰器を設置します。動作棒は前面ではなく裏眼鏡部に接続され、表眼鏡部には 緩衝器が設けられます。例では、円形の背面が見えます。
この機能によって、列車が出発してから信号てこを定位に戻すまでの間は「重錘は上がっているのに信号腕木は水平」という特殊な状態になります。

■ハシゴ

標準型:
原型です。当初は全ての信号機がこのタイプでした。後年では、出発信号機に多数残っていました。
ハシゴは信号機保守のために設置されます。場内・遠方信号機は信号柱が高く保守時の危険度も高いので、安全性・作業性向上から下記各タイプに改良されたものが多いと考えられます。逆に信号柱の低い出発信号機では多くが原型で残りました。
後年の場内信号機・遠方信号機でこのタイプを確認できたのは、北海道・高崎・静岡・名古屋・大阪・天王寺・四国・九州です。特に九州では出発・場内・遠方信号機すべてがこのタイプであり、ハシゴの改良はなかったようです。

色灯式信号機型:
色灯式信号機や中継信号機等の現行信号機の標準タイプです。ハシゴ上部が膨らんで点検台と一体になっており、上端の柵はカーブしています。このタイプでは 前面まで張り出した点検台がハシゴと一体になっているため、別途点検台を設けることはないようです。2機では、色灯式信号機の場合と同じく下位用信号機の 点検台がハシゴ一体で設けられます。
腕木式信号機での使用は、盛岡・金沢・広島で確認しました。

大鉄型:
大鉄局内で考案されたもので、ハシゴ上部がラッパ状に広がり上部柵が八角形になっています。信号柱とハシゴの間には必ず各信号機の点検台が設けられ、2機の場合は点検台も2基となります。
大鉄局内のみではなく、周辺の天王寺・岡山・米子、類似形が四国総に存在しました。これら地域では、ほとんどの場内・遠方信号機と、一部の出発信号機にも設置されています。設置高さは、ハシゴ上端が最上位信号腕木の直上になるタイプと直下になるタイプがあります。

広幅型(北海道):
北海道独特の形状で、幅が1.5倍ほど広い更新タイプです。積雪・凍結時の踏み幅確保のためと思われます。点検台と一体になっています。
従来の鉄製のほか、後年では亜鉛メッキのものもあります。

●使用停止標識

併合閉塞実施区間の中間停車場となる出発・場内信号機に設置されます。併合閉塞施行時に×が表示され、「使用停止中」を表します。
各JR私鉄によって装置は異なりますが表示内容は同じです。 国鉄分割民営化以前は「地方鉄道運転規則」にのみ規程されており国鉄では不要でしたが、JR化時の規則一本化によりJR内該当信号機にも設置されました 。

■塗装

一般:
信号柱本体のみ白塗装で、その他全ての装備が黒塗装です。つまり、ピナクル・眼鏡・信号灯具・動作棒・ハシゴ・ハシゴステー・点検台・エスケープクランク 部・重錘部・柱台・滑車部およびそれら取付け用のUボルトが黒塗装となり、塗分け作業が最も多いタイプです。(近年にハシゴ、点検台が更新されたものは亜 鉛メッキになっています。また視認性向上のため重錘を白にしたものもあります。)
※各地の腕木式信号機:一般タイプ:福知山線生瀬駅 参照

一般簡略1:
ハシゴステーが白で、他は一般と同じです。塗装作業の簡略化と思われます。
※各地の腕木式信号機:一般タイプ:姫新線播磨新宮駅 参照

一般簡略2:
柱台から信号柱のエスケープクランク部まで黒、他は一般と同じです。エスケープクランク部は動作によって油が飛散する部分であり、黒塗装にしてしまったと思われます。いわゆる暖地でエスケープクランク部が最下部取付のものに限ります。
※各地の腕木式信号機:一般タイプ:因美線美作加茂駅 参照

一般簡略3:
一般簡略2の理由である油飛散は、エスケープクランク部のほか、腕木軸承付近にも発生します。
播但線では、上位信号機の腕木軸承から上部、ピナクルまでが黒塗装になっていました。これ以外の塗装は一般簡略2と同一になっています。
遠方信号機では、信号柱なかほどの安全装置から下部が黒塗装になっっています。九州塗装と類似しますが、同じく油飛散のための簡略化と思われます。

九州:
九州独特の塗装です。ほぼ全ての信号機は、信号柱下端より3m程が黒になっています。
※各地の腕木式信号機:九州タイプ 参照

■点検台

ハシゴ形態以上にバリエーションがあります。ほぼ鉄道管理局によるオリジナルで広域にわたるタイプはありません。
※1/80腕木式信号機:点検台 参照

各地の腕木式信号機

現存する腕木式信号機は1913年に図集化=標準化された2位式腕木式信号機です。
そのなかで気象への特別な対策を必要としない暖地型=一般タイプは、北陸以外の関東以西・四国・九州に存在するものです。この一般タイプの中でも顕著に塗装塗分けが異なる九州内のものを九州タイプとし、気象対策別では、北海道タイプ、東北・北陸タイプの2タイプとします。ここではこれら合計4タイプに分類 します。
※個別説明
ハシゴ :標準型 色灯式信号機型 大鉄型 広幅型
点検台:支持腕あり 支持腕なし かご型 北海道かご型
ピナクル:長 短 北海道
電線引込:上部腕金 地中
塗装:一般 一般簡略1 一般簡略2 北海道 九州
これら細部については腕木式信号機の細部をご参照ください。

一般タイプ
本州の関東以西と四国に存在するタイプでエスケープクランク及び重錘部が最下部に取付けられ、塗装が一般=オリジナルに近いものです。ただし、ハシゴ・点検台形状の種類が多く、ここでの分類とは別の範疇での分類、つまり鉄道管理局単位での分類ができます。

福知山線生瀬駅 場内/通過・場内 1983.8

ハシゴ:大鉄型
ピナクル:短
電線引込:地中
点検台:支持腕なし
塗装:一般

右側の場内信号機は左側の場内/通過信号機により1m程後退した位置に 建っています。これは右側の場内は副本線ではなく砕石積込線に対する信号機であるため別格になっていると思われます。ハシゴ上端は上位信号機の直下です。 写真では分かりにくいですが、連査閉そく施行区間のため出発信号機に従属する通過信号機には信号復帰器が設置されています。

姫新線播磨新宮駅 場内/場内 1984.2

ハシゴ:大鉄型
ピナクル:長
電線引込:地中
点検台:支持腕あり
塗装:一般簡略1

副本線が主本線の右側に分岐している場合はこのように主本線に対する場内 の下位に副本線用を設置することができます。腕木式信号機では3機まで同一柱に設置できる規程になっています。ハシゴ上端は上位信号機の直下です。ピナク ルが長で原型です。戦時供出を免れたため生き残ったと思われます。

因美線美作加茂駅 場内/通過 1997.12

ハシゴ:大鉄型
ピナクル:短
電線引込:地中
点検台:なし
塗装:一般簡略2

通過列車である優等列車や専用貨物列車の設定された線区の典型的な場内/通過信号機で、全国各地で見られました。ハシゴ上端は上位信号機の直上です。また正面には点検台が付いていません。

因美線美作加茂駅 出発 1999.1

ハシゴ:標準型
ピナクル:短
電線引込:地中
点検台:かご型
塗装:一般簡略2

このハシゴが原型=標準型です。上部にハシゴ一体の点検台がなく、かご型を別途設置しています。


北海道タイプ
いうまでもなく北海道では、エプクスケーランク及び重錘部が積雪で埋まらないように高い位置に取付けられています。積雪の度合いによって北海道内でも違いがあるようですが、線路路盤より約3m上になっています。腕木式信号機と転てつ器との連動装置(第2種機械連動 装置)も高架型になっており鉄索も架線状になっています。また近年の対策として、ピナクル積雪防止のため円錐型のものに取り替え、長期積雪に埋まっている 状態での防錆対策として、信号柱やハシゴ、点検台の亜鉛メッキ無塗装化などがあります。

石勝線清水沢駅 出発 2000.11

ハシゴ:広幅型
ピナクル:北海道
電線引込:地中
点検台:北海道かご型
塗装: 一般

エスケープクランク位置が高く、点検台が大きく、ピナクルの膨らみがな く、典型的な晩年北海道タイプです。手前のコンクリート柱は、架空の鉄索を腕木式信号機のスイブルホイールまで降ろしてくる中継の滑車を設けるためのもの です。他の信号機用の鉄索も地上まで降り、トラフで防護され線路を横断しています。この設備にも信号機同様の点検台とハシゴが装備されています。かつては 木柱でした。

深名線朱鞠内駅 出発 1994.10

ハシゴ:広幅型
ピナクル:北海道
電線引込:地中
点検台:北海道かご型
塗装:一般

上記の信号機よりもさらに積雪対策を強化した北海道最終タイプといえます。白塗装部が全くなく、点検台にはメッシュが張られています。背後には木柱の中継滑車と、高架型第2種機械連動機が見えます。


東北・北陸タイプ
東北・北陸地方でも積雪対策が施されています。積雪の度合いによってエスケープクランクの位置が上がります。鉄索も高い位置を這いますが、高架型第2種機械連動機はほとんどなく、北海道のように架空で線路を横断することもほとんどないようです。
山陰地方の場合、概ね東北・北陸地方ほどの積雪はなく、対策としては鉄索を地上1m位まで上げる程度です。

越美北線越前大野駅 場内 1991.7

ハシゴ:色灯式信号機型
ピナクル:短
電線引込:地中
点検台:なし
塗装:一般簡略1

ハシゴは下記と同じタイプですが、信号柱から前半分の点検台がありません。これは金鉄局の特徴といえます。この信号機ではエスケープクランクが線路路盤より3m程の位置に上げられています。

花輪線鹿角花輪駅 場内・場内 1994.11

ハシゴ:色灯式信号機型
ピナクル:短
電線引込:上部腕金
点検台:なし
塗装:一般

副本線が主本線の左に分岐しているときは、別柱にて主本線の左側に主本線 用より一段下げて設置します。この信号機でもエスケープクランク部が線路路盤より3m程の位置に上げられています。ハシゴは近年更新されたようです。信号 柱先端には電源引込用の腕金と碍子があります。また、右側主本線場内信号機の信号腕木はJR化後の更新です。


九州タイプ
一般タイプとの最も目立つ差異は塗分けです。ごく一部を除き、九州内の腕木式信号機信号柱の下部3m程は黒塗装 になっています。戦時中は発見防止と塗料節約のため信号柱黒塗装部を増やしたものが全国的に見られましたが、九州内ではそれが標準化されたとも考えられま す。またハシゴ形状は標準型のみで他は見ません。このほか、ほとんどの場内信号機に黒地・黄文字の番線表示標が添装されているのが特徴です。

大隅線・志布志線志布志駅 出発/出発 1987.3

ハシゴ:標準型
ピナクル:短
電線引込:地中
点検台:支持腕あり
塗装:九州

志布志線と大隅線が分岐する出発信号機です。それぞれ同格路線扱いのため同一高さの並列例です。
各信号機下には、それぞれの進路である番線表示標が設置され、九州タイプの特徴のひとつです。

松浦線伊万里駅 出発/出発・出発/出発 1987.9

ハシゴ:標準型
ピナクル:短
電線引込:上部腕金
点検台:支持腕あり
塗装:九州

この信号機は松浦線がスイッチバックする伊万里駅のもので、左右の信号機どちらも上位が有田方、下位が佐世保方となっています。点検台は信号腕木1機につき1基設けれれています。 このように同一柱に2方向の出発を設置する例は、線路が多く余裕のない構内から支線が四方へ分岐していた筑豊地区でよく見られました。

腕木式信号機の構造

腕木式信号機を転換させる方式です。機械式4種類と電気式1種類です。この5種類の中で、遠距離操縦となる遠方信号機用として考案されたものが4種類になりますが、数的には少数です。

■1条鉄索式信号機(単線式)

信号機と信号てこを1本の鉄索(ワイヤー)で結び、てこの機械力で現示転換する方式です。ほとんどの機械式信号機はこの方式によるものです。一般的に、信号てこと信号機の距離は800mが限界とされています。
てこを反位に転換すると、鉄索が引かれ、信号機下部の重錘カンを引き上げます。重錘カンはエスケープクランクと一体になっており、エスケープクランクの機構によって接続カンを押し上げ、信号腕木を45°降下させます。
次にてこを定位に戻すと、鉄索の張力が失われ重錘カンが降下します。これによって接続カンも降下し、信号腕木を水平に戻します。
鉄索が切れた場合、 重錘カンは重力によって降下したままになるので、信号腕木は水平を保ち、安全側の停止現示となります。
寒暖の差による鉄索の伸縮は、現示転換不良となります。このため、鉄索の伸縮にあわせてターンバックルの調整が必要となります。

■2条鉄索式信号機(双線式)

信号機と信号てこを2本の鉄索(ワイヤー)で結び、てこの機械力で現示転換する方式です。1条鉄索式では操縦距離が長くなると鉄索の弛みが増え 転換不良になりやすく、この欠点を補うための方式です。遠方信号機はほとんどこの方式ですが、大停車場では場内や出発にも使用されていました。一般的に、 信号てこと信号機の距離は1000mが限界とされています。
鉄索は常に簡易調整機によって緊張しており、鉄索は信号てこのドラムと安全装置を往復して結ばれています。この2本の鉄索の引き・帰りによって信号現示を転換させます。
この構造では、鉄索切断時に安全側=停止現示にさせることはできないので、安全装置が必要となります。鉄索切断によって鉄索緊張が弛緩すると安全子の掛金が外れ、動作棒が落下したままの状態、つまり信号腕木が水平を保つことになります。
寒暖の差による鉄索の伸縮は簡易調整機に吸収され、常に緊張を保つことができます。

■D形信号機

一番新しい方式です。信号てこと信号機の距離が長く、2条鉄索式でも操縦困難な場合に採用され、主として遠方信号機に用いられました。鉄索は2 条で、信号機柱に円形エスケープクランクが設置されます。鉄索はホイールに結ばれ、信号てこによる引き・帰りの動作でホイールを回転させます。ホイールに はカム溝があり、これによって動作棒が上下し、信号腕木を転換させます。
鉄索切断時は、ブリケージロック装置により、定位なら定位に固定、反位なら定位に戻す機能が備わっています。この方式は、なめらかなカムの摺動で作動する ため転換時の衝撃が少く、タマ切れ事故対策にもなります。この変形版(1条鉄索で一端を錘にしたタイプ)とともに常時点灯である機械単灯形信号機にも多く 用いられました。

■鉄管式

ごく一部の第2種機械連動装置の停車場で試用された方式です。第2種機械連動装置では信号機転換用の鉄索が連鎖関係 転てつ器まで迂回し操縦距離が非常に長距離になることがあります。それによる鉄索弛緩等の問題を、選別器用連動機を使用して転てつ器用鉄管と共用し導程の ほとんどを鉄管にして解決した方式です。
鉄索よりも動作の信頼性が確実に向上しますが、操縦距離や信号機と転てつ器との関係などの一部の条件でのみ有利な方法です。

■A形電気信号機

この方式は唯一機械式ではなく、電動機によって信号腕木を転換させるものです。極めて遠距離の遠方信号機に多用されました。また自動閉塞区間における腕木式信号機にも類似した機構のものが用いられていました。
場内信号機に添装される腕回路制御器(アームコンタクト)の電気回路によって制御されます。つまり、場内信号機が反位になれば腕回路制御器の接点が構成さ れ、A形電気信号機の制御リレーが動作して電動機を回します。所定の回転角度に達すると、電動機への回路は断たれ同時に電磁石への回路が構成され、それが 励磁されるによって反位の角度に保持します。場内信号機が定位に戻ると、腕回路制御器の接点が開放されることにより電磁石への回路が断たれて無励磁とな り、信号腕の自重によって水平=定位に戻ります。
この方式の信号腕木の寸法形状は、機械式とは若干異なります。

機械式の信号・転てつてこ

てこは、信号用と転てつ用(転てつ器に関連する装置も含む)があります。
信号てこは、腕木式信号機・機械単灯形信号機等の機械信号機に使用され、閉塞併合てこにも同形態のてこが使用されます。転てつてこは転てつ器を転換させるもので、これに関連して鎖錠装置やてつ査かん(デテクタバー) 専用のてこもあります。信号機用は鉄索(ワイヤー)で、転てつ用は主として鉄管(パイプ)で伝導されます。
信号てこと転てつてこの形態は連動装置の種類によって全く異なるものになります。一般的に、第1種機械連動装置の場合は、信号・転てつ・転てつ鎖錠等すべてのてこが信号所に集中されており、てこの形態も全て同一です。第2種機械連動装置の場合は一般的に、信号てこは集中(2箇所以上に分けて設けられていることもある)、転てつてこは転てつ器付近現場に設けられ、それぞれのてこは異なった形態をしていますが、例外もあります。

第2種機械連動装置

信号てこ(1条鉄索式)
腕木式信号機を主とする1条鉄索式機械信号機のてこです。てこを倒す と、てこ下部のドラムが回り(90°)鉄索が巻かれます。鉄索が巻かれた状態(てこを倒した状態)が反位、戻った状態が定位です。この鉄索と信号機が結ば れ信号機の現示を操縦します。信号機と転てつ器の連鎖は転てつ器付近の第2種機械連動機によりますが、信号てこ相互間の連鎖の多くはてこ背面の鎖錠駒と ロックバーによるてこ連鎖となっています。

第2種機械連動装置

信号てこ(2条鉄索式)
腕木式遠方信号機を主とする2条鉄索式機械信号機のてこです。1条鉄索式てことはてこ台の形態が全く異なります。
てこを倒すと、てこ下部のドラムが回り(90°)2条の鉄索が引き帰りします。てこを倒した状態が反位、戻った状態が定位です。この鉄索と信号機が結ばれ 信号機の現示を操縦します。信号機と転てつ器の連鎖は転てつ器付近の第2種機械連動機によりますが、信号てこ相互間の連鎖の多くはてこ背面の鎖錠駒とロッ クバーによるてこ連鎖となっています。
※最左のてこ

第2種機械連動装置

信号てこ(電気鎖錠器)
「第2種機械連動装置における信号てこ」と機能的に同じですが、背面に電気鎖錠器が付いています。てこの定位・反位によって電気鎖錠器の構成回路が変わり、電気的に他のてこと 連鎖させ、誤った扱いが出来ないようになっています。てこ手前に踏釦があります。主に機械信号機の出発に設けられます。
※中央2本のてこ

第2種機械連動装置

閉塞併合てこ
夜間等の中間停車場で列車交換等がない場合、要員合理化のため複数の閉 塞区間を1つの閉塞区間にし、中間停車場を閉鎖することを閉塞区間併合運転といいます。併合閉塞施行時に反位にするてこを閉塞併合てこといい、第2種機械 連動装置の場合は、信号てこと同形態のてこが信号てこと並んで設置されます。このてこを反位にすることによって、進路となる信号機を反位に、転てつ器は進 路構成状態に、ATS-S地上子を機能停止に、踏切を自動制御に、通票閉塞器電話回線を開放・直通状態に鎖錠します。

第2種機械連動装置

転てつてこ
第2種機械連動装置における、転てつ器転換用のてこです。転てつ器付近に設けられます。ひとつのてこで2以上の転てつ器を扱う2動(双動)、3動もあります。てこと転てつ器は鉄管で接続され、その間には必要に応じて各種のクランクが介します。

第2種機械・電気連動装置

転てつてこ(電気鎖錠器)
「第2種機械連動装置における転てつてこ」と同じですが、側面に電気鎖 錠器が付きます。第2種機械連動装置・第2種電気連動装置等における転てつ器操縦に使用されます。第2種機械連動装置では信号てこ付属の電気鎖錠器と連鎖 させます。第2種電気連動装置の場合は信号機が電気によるものなので、この電気鎖錠器と信号機を電気的に連鎖させて誤った扱いが出来ないようになっていま す。

第2種機械連動装置
(鋼索連動装置)

集中された転てつてこ
一般的に従来の第2種機械連動装置では信号は本屋付近で、転てつ器は現場で扱うため労力を費やします。そのため鉄管を引き回して転てつてこを信号てこと集中させても、転てつ器からの距離が遠くなり操縦力がかかり、また鉄管の保守に費用がかかることなどから、鉄索で転てつ器を操縦する簡易鉄索式転換装置および簡易鉄索式特殊てこが考案され、1957年より1964年ころまでの 間に新設されました。設置対象は閑散線区の単純な交換設備の停車場でした。その後の継電連動化や発条転てつ器(スプリングポイント)の進展、また新設期間も短かったため少数派の設備です。
※最左のてこ

第2種機械連動装置

集中された信号・転てつてこ
「第1種機械連動装置における信号・転てつ等のてこ」と同タイプのもの が、まれに第2種機械連動装置でも使用されます。「第2種機械連動装置 における集中された転てつてこ」と同じく転てつてこと信号てこが集中される場合は、「第2種機械連動装置 における信号てこ」の項のてこ連鎖の代わりに第1種機械連動装置と同じもの(駒鎖錠)がてこ背面に設置されますが、あくまでも信号てこ相互の連鎖のみに使 用され、信号機と転てつ器の連鎖は、転てつ器付近の第2種機械連動機で行われます。

第2種機械連動装置

集中された転てつてこ
「第2種機械連動装置における集中された信号・転てつてこ」と同じように転てつてこが集中されている場合で、ここではてこ相互の連鎖は行われません。

第1種機械連動装置

信号・転てつ等のてこ
第1種機械連動装置のてこで、機械信号機、転てつ器、鎖錠装置、てつ査かんの操縦用です。ラッチ、ロッカーにより定位、反位で固定され、背面に第1種機械連動装置が設けられます。電気鎖錠器が設置されているものもあります。 主に信号所建屋の2階に設置され、信号機は鉄索で、転てつ器等は鉄管で階下に降り、地上を這います。鉄管には必要に応じて各種クランクが設けられます。

第1種電気機連動装置

信号てこ(色灯式信号機)
第1種電気機連動装置の場合、主として転てつ器、鎖錠装置、てつ査かん等のてこは上記と同じてこ、色灯式信号機は電気的により操作されますが、相互の連鎖は第1種機械連動機と同じく背面の駒鎖錠によります。
※色灯式信号機および入換信号機のてこ

1/80 ブラケット腕木式信号機

大停車場において、用地狭小で信号機を並べて建植できない場合にブラケットが用いられました。和田岬支線兵庫駅場内信号機として1990年まで使用されていたものをモデルにしていますが、全国的に同タイプが存在します。

・8023 3柱ブラケット腕木式信号機 出発 7,800円 ※終了
・8024 3柱ブラケット腕木式信号機 場内 7,800円 ※終了
・8032 2柱ブラケット腕木式信号機 出発 7,000円 ※終了
・8033 2柱ブラケット腕木式信号機 場内 7,000円 ※終了
・8034 信号柱ハシゴ 700円 ※終了

8024組立例
8024組立例
8024組立例
8033組立例
8033組立例
8024キット内容

8023
3柱ブラケット腕木式信号機 出発 7,800円※終了

8024
3柱ブラケット腕木式信号機 場内 7,800円 ※終了

8033キット内容

8032
2柱ブラケット腕木式信号機 出発 7,000円※終了

8033
2柱ブラケット腕木式信号機 場内 7,000円※終了