現存する腕木式信号機は1913年に図集化=標準化された2位式腕木式信号機です。
そのなかで気象への特別な対策を必要としない暖地型=一般タイプは、北陸以外の関東以西・四国・九州に存在するものです。この一般タイプの中でも顕著に塗装塗分けが異なる九州内のものを九州タイプとし、気象対策別では、北海道タイプ、東北・北陸タイプの2タイプとします。ここではこれら合計4タイプに分類 します。
※個別説明
ハシゴ :標準型 色灯式信号機型 大鉄型 広幅型
点検台:支持腕あり 支持腕なし かご型 北海道かご型
ピナクル:長 短 北海道
電線引込:上部腕金 地中
塗装:一般 一般簡略1 一般簡略2 北海道 九州
これら細部については腕木式信号機の細部をご参照ください。
一般タイプ
本州の関東以西と四国に存在するタイプでエスケープクランク及び重錘部が最下部に取付けられ、塗装が一般=オリジナルに近いものです。ただし、ハシゴ・点検台形状の種類が多く、ここでの分類とは別の範疇での分類、つまり鉄道管理局単位での分類ができます。
ハシゴ:大鉄型
ピナクル:短
電線引込:地中
点検台:支持腕なし
塗装:一般
右側の場内信号機は左側の場内/通過信号機により1m程後退した位置に 建っています。これは右側の場内は副本線ではなく砕石積込線に対する信号機であるため別格になっていると思われます。ハシゴ上端は上位信号機の直下です。 写真では分かりにくいですが、連査閉そく施行区間のため出発信号機に従属する通過信号機には信号復帰器が設置されています。
ハシゴ:大鉄型
ピナクル:長
電線引込:地中
点検台:支持腕あり
塗装:一般簡略1
副本線が主本線の右側に分岐している場合はこのように主本線に対する場内 の下位に副本線用を設置することができます。腕木式信号機では3機まで同一柱に設置できる規程になっています。ハシゴ上端は上位信号機の直下です。ピナク ルが長で原型です。戦時供出を免れたため生き残ったと思われます。
ハシゴ:大鉄型
ピナクル:短
電線引込:地中
点検台:なし
塗装:一般簡略2
通過列車である優等列車や専用貨物列車の設定された線区の典型的な場内/通過信号機で、全国各地で見られました。ハシゴ上端は上位信号機の直上です。また正面には点検台が付いていません。
ハシゴ:標準型
ピナクル:短
電線引込:地中
点検台:かご型
塗装:一般簡略2
このハシゴが原型=標準型です。上部にハシゴ一体の点検台がなく、かご型を別途設置しています。
北海道タイプ
いうまでもなく北海道では、エプクスケーランク及び重錘部が積雪で埋まらないように高い位置に取付けられています。積雪の度合いによって北海道内でも違いがあるようですが、線路路盤より約3m上になっています。腕木式信号機と転てつ器との連動装置(第2種機械連動 装置)も高架型になっており鉄索も架線状になっています。また近年の対策として、ピナクル積雪防止のため円錐型のものに取り替え、長期積雪に埋まっている 状態での防錆対策として、信号柱やハシゴ、点検台の亜鉛メッキ無塗装化などがあります。
ハシゴ:広幅型
ピナクル:北海道
電線引込:地中
点検台:北海道かご型
塗装: 一般
エスケープクランク位置が高く、点検台が大きく、ピナクルの膨らみがな く、典型的な晩年北海道タイプです。手前のコンクリート柱は、架空の鉄索を腕木式信号機のスイブルホイールまで降ろしてくる中継の滑車を設けるためのもの です。他の信号機用の鉄索も地上まで降り、トラフで防護され線路を横断しています。この設備にも信号機同様の点検台とハシゴが装備されています。かつては 木柱でした。
ハシゴ:広幅型
ピナクル:北海道
電線引込:地中
点検台:北海道かご型
塗装:一般
上記の信号機よりもさらに積雪対策を強化した北海道最終タイプといえます。白塗装部が全くなく、点検台にはメッシュが張られています。背後には木柱の中継滑車と、高架型第2種機械連動機が見えます。
東北・北陸タイプ
東北・北陸地方でも積雪対策が施されています。積雪の度合いによってエスケープクランクの位置が上がります。鉄索も高い位置を這いますが、高架型第2種機械連動機はほとんどなく、北海道のように架空で線路を横断することもほとんどないようです。
山陰地方の場合、概ね東北・北陸地方ほどの積雪はなく、対策としては鉄索を地上1m位まで上げる程度です。
ハシゴ:色灯式信号機型
ピナクル:短
電線引込:地中
点検台:なし
塗装:一般簡略1
ハシゴは下記と同じタイプですが、信号柱から前半分の点検台がありません。これは金鉄局の特徴といえます。この信号機ではエスケープクランクが線路路盤より3m程の位置に上げられています。
ハシゴ:色灯式信号機型
ピナクル:短
電線引込:上部腕金
点検台:なし
塗装:一般
副本線が主本線の左に分岐しているときは、別柱にて主本線の左側に主本線 用より一段下げて設置します。この信号機でもエスケープクランク部が線路路盤より3m程の位置に上げられています。ハシゴは近年更新されたようです。信号 柱先端には電源引込用の腕金と碍子があります。また、右側主本線場内信号機の信号腕木はJR化後の更新です。
九州タイプ
一般タイプとの最も目立つ差異は塗分けです。ごく一部を除き、九州内の腕木式信号機信号柱の下部3m程は黒塗装 になっています。戦時中は発見防止と塗料節約のため信号柱黒塗装部を増やしたものが全国的に見られましたが、九州内ではそれが標準化されたとも考えられま す。またハシゴ形状は標準型のみで他は見ません。このほか、ほとんどの場内信号機に黒地・黄文字の番線表示標が添装されているのが特徴です。
ハシゴ:標準型
ピナクル:短
電線引込:地中
点検台:支持腕あり
塗装:九州
志布志線と大隅線が分岐する出発信号機です。それぞれ同格路線扱いのため同一高さの並列例です。
各信号機下には、それぞれの進路である番線表示標が設置され、九州タイプの特徴のひとつです。
ハシゴ:標準型
ピナクル:短
電線引込:上部腕金
点検台:支持腕あり
塗装:九州
この信号機は松浦線がスイッチバックする伊万里駅のもので、左右の信号機どちらも上位が有田方、下位が佐世保方となっています。点検台は信号腕木1機につき1基設けれれています。 このように同一柱に2方向の出発を設置する例は、線路が多く余裕のない構内から支線が四方へ分岐していた筑豊地区でよく見られました。